講師:三沢誠(為替ディーラー)
※こちらの内容は、セミナー開催日の8月4日時点でのものです。現在とは若干状況が異なりますことをご了承ください。
=現状に合わせた精度の高い取引
7月後半から始まった下落は、正常な調整の範囲内です。今までの相場が円安に行きすぎた感がありました。長年為替に携わっている人は、歴史的経験からレベル感を持っていると思いますが、今の相場は、そうした過去の経験が通用しない相場になっています。少し調整が入ってもだらだらと調整を続けるだけで、緊張感に欠ける相場です。
その原因は、世界的好景気です。一般会社員や国民には感じられないかもしれませんが、世界的には儲かっていますし、企業も儲かっています。企業が儲けていますから、世界的にお金が余っています。このお金が国民に回らず資産運用に回り、世界的にマネーゲームが過熱し、インフレ気味になっています。こうした二極化の異常な構造が続いているため、今までとは違う「変な」相場になっています。
しかし、好景気はいずれ景気減速、不景気になります。これを常に頭においておかなければなりません。来年になったら、景気減速に変わってくるでしょう。
また、現在は金利相場です。余ったお金は金利の高いところで運用しますから、為替相場も金利相場になります。こうした高金利志向に対し、日本の低金利がありますので、円キャリートレードが頻繁に行われるというわけです。とはいえ、景気が減速すれば、金利相場も終わります。来年には各通貨が利下げに動く可能性が高いので、金利相場は終焉に向かうでしょう。
そして、オプション取引が以前より目立ち始めています。もちろん以前からオプション取引はありましたが、それを飲み込むほど為替市場は活況だったので、あまり目立ちませんでした。しかし、今の為替取引量は、私が現役時代の1/10にすぎません。ですから、オプション取引が為替市場を支配している状態です。防戦売り、防戦買いの双方の攻防が激しく、相場が動かなくなっています。私が現役時代はこれも飲み込んで、相場が右往左往していました。
さらに、実需に変化が起きました。日本の輸出企業に需要があるドル売り円買いの為替取引が生じるビジネスが減って、輸入企業に需要があるドル買いが増加しています。なぜなら、日本企業は、国内生産から現地生産に切り替えているからです。
かつては、ドル売りが多くてドル買いが少ないというのが日本の極端な構造で、それが円高の要因だったのですが、今は逆で、ドル買いが多くドル売りが少ないため、右上がりのドル高円安曲線になっています。
そのほかに特殊買い要因があります。中国は北京オリンピックを成功させるため、大量に原油を使って、フル稼働で物を作っています。そのため、原油が高騰。そのほかにも、中国が原材料を大量に使うので、世界中でモノ不足が起き、コスト高になってインフレと同じような状態を引き起こしています。
ほかにもありますが、これが現在の相場が以前と変わった代表的な6つの要因です。
このように極端な高金利志向に傾いた相場展開は、今まで見たことがありませんし、歴史的にも例がありません。だから史上最高値になったんでしょう。レベル感・買いすぎ感がないまま、常に買い意欲の強い相場も今までにありませんでした。私が現役時代は、今とは全く逆の下落の恐怖の強い、売り相場でした。ドルが下がるとさらなる下落の恐怖を常に感じていました。
さらに、各国は公式に円安懸念発言もしないし、行動も起こしません。世界的に好景気なので、懸念発言のせいで相場が急落しないよう、誰も今の相場に触れたくないのです。これも歴史上なかったことです。ですから、当局が公式に円安懸念発言をし始めたら危険だとも言えます。為替市場は米国中心で動いていますから、アメリカが動かないと為替相場は動きませんが、アメリカは1ドル124円で満足しています。アメリカが今、関心を向けているのは中国ですし、ユーロなど円以外の他国通貨に対してはドル安ですから、円安にはあまり興味がありません。そういうわけで、アメリカが今、動く必要はないのです。
それから、今は大きく動かない相場ですから、みんなあまり損切りをしなくなりました。私が若い頃は損切りばっかりでしたよ。
また、輸出大国日本の実需のドル売りがなくなったので、為替相場が操作されやすくなりました。オプション取引、キャリー取引しかり。取引参加者がいない分、コントロールしやすくなりました。これが実は今の為替相場が抱えている重要な問題です。
実はコントロールしやすい相場というのは、2,3年前にドル円が非常に下がっていたときに、財務省が「絶対これ以上下げさせない」と、強い意志を持って無限介入したことから始まっているんです。それで、大口取引業者がレバレッジをかけて大規模に買い支え、損切りしなければいつかは売りが切れて、為替相場を上げることができるだろうと、為替相場が気づいてしまった。それで結局はこういう相場になっているのです。
現在、各国の金利は高い水準ですが、アメリカは金利を5%以上にしたくなかった。できることなら、4%台で抑えたかった。しかし、原油インフレで5%以上にせざるを得なかったのです。特に余分に上げた分は下がります。オセアニア通貨を今買うのはかなり危険な状況だと思います。高金利通貨ほど、利下げには注意してください。
私の経験の中で見つけてきた有効な方法は、これだけあります。いや、これ以上あります。
※ニュース・実需・トレンドなどの材料もうまく利用して仕掛けられる 追いかけ(順張り)取引または指値取引で待つ!
私はほとんどこの方法で利益を上げていました。為替取引のほとんどは、前市場の上下にあるストップオーダーをつけに行く取引です。これが私の為替相場のポリシー、考え方です。どんな為替ディーラーでも、もったポジションに対して損切りオーダーを置いています。損切りオーダーは、前市場の高値安値の少し外側にストップを置くのがディーラーの習性です。逆に言えば、そのあとの市場のディーラーは、高値安値の外側にあるストップを狙って、相場を動かします。
ですから私が朝一ですることは、ニューヨーク市場の高値安値を考えて買いか売りか、シナリオを作ります。欧州市場はサマータイムである今は、午後4時にオープンしますが、彼らは東京の高値/安値を見て、つけやすい方につけにいきます。ニューヨーク市場は、東京、欧州の高値/安値を見て、双方ミックスしてつけやすいほうに動きます。ただ、ニューヨーク市場は、NYダウや経済指標の発表など、この動きを邪魔する要素が多いのが特徴です。とにかく、各市場、前市場の高値/安値を意識しながら動いているだけです。他に大きな変動要素がなければ、基本的にはこの動きをします。
この方法は、超短期・短期取引の有効な手段です。そうしたディーラーの動きにあやかって利益を上げていく。ただ、この方法はリスクが高いので欲張ってはいけません。柔軟に対応を変えていく必要もありますが、慣れてくればかなり確率が高いですね。
狙われている大台30銭以上手前での取引(ポジションづくり)!
オプション取引が今の為替市場で目立っています。支配されていると言ってもいい。アメリカの投資銀行などがオプション取引を流行らせてきましたが、その規模が大きくなって、かなり目立つようになりました。特につけたら大損、つけなかったら利益が大きいというノックアウトオプション(註:たとえば、118円をつけたら、オプションのために支払った手数料も、そのオプションによって得られる、もっと下のレートで買う権利もすべてなくなってしまう)をつけにいく行為が目立っています。そのため、ノックアウトオプションを付けられたくない人が防戦売り、防戦買いを始めました。自分たちの権利を失いたくないので、ノックアウトの手前から壮絶なバトルがあります。それが今、為替相場の主流になっています。特に今は、買い方が優勢です。
防戦買い/防戦売りがストライクプライス手前で最初は反転させる!
日本時間の早朝は防戦売り、防戦買いの戦争が起きています。117円、118円、119円の大台など、いたるところにオプションのストップが置かれています。一度オプションをつけてしまうと大きく動きますが、つけないともみ合っています。
オプションについては、大台にノックアウトがあり、それを狙っていく動きがあるとイメージできれば追随していけばいい。一気にオプションをつけにいくということはあまりなく、だいたいもみ合いながらジリジリとつけていくということが多いです。
追いかけ(順張り)取引も取引タイミング難解に!
実需買い、実需売りは、為替相場のなかでは一番安全な取引です。ですから、そういう情報が流れれば安心して取引できます。しかし、今はドル買いが少なくなりました。特にかつては5、10日の仲値のときに30銭から50銭は上がっていましたが、ここ1年、ちょっと違う相場です。
それから、実需のドル売り、実需のドル買いも減少しています。いずれにせよ、実需をもとに取引タイミングをとるのは、昔に比べ難しくなっています。
分析・データベース背景のレベル感による取引/指値取引に不安
短期的には有効ですが、今は変化がありすぎて困っています。強引な取引手法でチャートポイントを無視しています。チャート的に買いすぎだとしても、買いすぎのまま反転の機会が失われています。月足のチャートでみると、各通貨70 ~80パーセント上げすぎにもかかわらず上がっていきました。今はチャートを見てもチャートポイントとうい目印がないので、私もレベル売りに苦労しています。感覚でやっていますね。
世界的資産運用のおかげで、下げ渋り相場で、非常にやりづらく、この状況で指値取引は不安です。戻り売りも不安。売りをする方は慎重に行ってください。私の頭の中に売りのチャートが描けない状態です。
短期取引では現状間接的・補助的材料として活用!
ここ1年で為替相場が大きく変わったせいで、ファンダメンタルズを無視した動きが横行しています。また、為替が商品や原油と連動した動きをしているため、資源通貨であるオセアニア通貨が上がっています。高金利の影響でオセアニアの経済は悪くなるかもしれませんが、商品価格の高騰のおかげでオセアニア通貨は下がらないかもしれません。
とにかく金利優先の相場になっていますから、国のリスクは関係ありません。金利に関連するニュースが出るときにレートは動きますが、それに直結しなければほぼ無視されます。こういう相場は初めてですね。いずれにせよ、ファンダメンタルズは主役にはなりません。
追いかけ(順張り)取引も動かないことが多くリスク!
以前は、アメリカから何か発言があれば相場は動きましたが、最近は相場を動かす要人自体が少なくなりました。私が若い時には要人発言は大きなチャンスでしたが、現在はチャンスになりません。ただ、アメリカからの口先介入があれば結構相場は動きます。
ポイントブレイク逆指値取引も勢いに不安リスク!
市場間でギャップが出たときは、ギャップを埋める動きがあります、大相場になるほどギャップが大きくなりますが、下がったら戻りますし、上がったら下がっていきます。この自動反転的な動きは、論理的に説明できません。もしそんな大相場があったら、ギャップをメモしておいてほしいですね。この動きは当日で埋めてしまうこともあれば、一日たって埋めることもあるけど、早めに埋めにいきます。昔はギャップができても、前日の安値/高値まで戻すことが多かったのですが、最近はその力が弱く、ギャップの半分しか戻しません。このギャップ埋めの動きは、有効な取引手段として人気があります。
追いかけず、1.5円~2円動いたらレベル売り(買い)
日本では、お役人が口下手なので口先介入では相場はあまり動きません。実際に介入を行った場合には、基本的に仲値から2円動くと反転します。それ以上は介入しません。逆に2円動いたらレベル買い、レベル売りをして儲ける。これは一番簡単に儲けられる手法だと思います。

三沢誠
為替ディーラー
1978年 早稲田大学卒業
1978年 香港上海銀行に入行
1981年 資金為替課長
1983年 加ノバ・スコシア銀行、米ケミカル銀行(現JPモルガンチェース銀行)・英バークレイズ銀行・クレディ・スイス銀行(現CSFB)でチーフ・ディーラーを歴任
2002年 外国為替証拠金取引の世界に身を投じ、一般投資家向けに勝率の高い取引方法および為替情報を提供
各国大手名門銀行にて長年にわたり、トップディーラーとして活躍した名為替ディーラー。 為替相場を考える上での基本となるファンダメンタルズ分析やチャート分析をもとに、取引現場での長い経験を生かし、その市場の習性・パターン的要素を検証・駆使し、更には市場参加者の売り買いの心理面を加味した、より実践に近いよりリスクの少ないストラテジー作成を得意としている。
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